2014/07/23

小鳥「まただ……またヤツが来る……」P「誕生日のことですか?」


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/28(木) 23:44:01.12 ID:EwRku57V0
小鳥「ちょっ、止めてくださいよ!気にしてるんだから!」

P「まだそんなこと言ってるんですか」

小鳥「いくつになっても心は乙女なんですよ!」

P「ぶふっ」

小鳥「わ、笑わないでくださいよ!」

P「いや、すいません。なんだか可愛らしくて」

小鳥「そんなお世辞言っても誤魔化されませんよ!」

P「お世辞じゃないですってば。本気ですよ」

小鳥「もう……」

P「すいません、ちょっと調子に乗りすぎました」

小鳥「いいですけど……もう……」

P「ところで夕食は何ですか?」

小鳥「お肉が安かったからキムチ鍋にしました」

P「いいですね」

小鳥「もう食べます?あなた」



4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/28(木) 23:53:13.08 ID:EwRku57V0
郊外の一軒家が俺たちの家だ。

交通の便がいいのに静かなところが気に入ってる。

時折カエルの鳴き声が聞こえてきて、二人でしんみりとするのも良いものだ。


P「おお……うまそうだ……」

小鳥「ふふふ……ちゃんとビールも冷やしてありますよ」

P「いやぁこんなに美人で料理がうまくて気の利く嫁がいて俺は幸せだなぁ」

小鳥「もう……またそんなこと言って」

P「本気ですもん。俺、小鳥さんの事大好きですよ?」

小鳥「……………………」


褒めるとすぐに真っ赤になってしまうところも愛おしい。

テーブルで向かい合わせになりながら鍋をつついた。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/28(木) 23:59:29.41 ID:EwRku57V0
小鳥「そう言えば春香ちゃんからハガキ来てましたよ」

P「春香から?へぇ、珍しいな」

鍋の火力を調整しながら受け答え。本当に珍しい。

P「あいつもたまには遊びに来ればいいのに。しかも今時ハガキってのがまた」

小鳥「ふふふ……。春香ちゃんらしいといえば春香ちゃんらしいですよ」

P「そうかもしれませんね。……それでなんて書いてあったんですか?」



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:05:34.67 ID:HxKIIocf0
P「そうかもしれませんね。……それでなんて書いてあったんですか?」

小鳥さんが差し出した絵ハガキを受け取る。

ハガキの上面には広い広い草原の真ん中で笑顔の春香が写っていた。


P「あいつも忙しそうだなぁ……。デビュー当時からは想像もつかないよ」

小鳥「春香ちゃん頑張ってましたから。今度のドラマの主演に選ばれたそうですよ」


文面にはその旨と『今度遊びに行きますね!』と大きな文字が元気よく書かれてあった。

酒の肴に春香の生涯転倒回数を語り合った。



10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:15:10.55 ID:HxKIIocf0
そういえば

P「誕生日、どうします?なにか欲しいものとかあれば」

小鳥「出来れば忘れて欲しいんですけど……」

P「なんでですか。大事な日ですよ」

小鳥「はぁ……どうして毎年律儀に来るのかしら……」

P「誰にだって毎年来ますよ。小鳥さんが一つ年を取れば俺も取ります。それでいいじゃないですか」

小鳥「そのマンガは好きですけど、そうやって割り切れるものじゃないです……」

チョンチョンとおひたしで遊びながらイジケモードになってしまった。



14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:18:34.95 ID:HxKIIocf0
P「……あんまり気にしないほうがいいんじゃないですか?」

小鳥「そりゃあ、あなたはまだ若いからそう思うかもしれないけど……」

P「そんなに離れてないですよ。大丈夫!小鳥さんは美人ですから!」

小鳥「ありがとうございます……」

納得してない様子だ。

難しいな。こういうのって。



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:25:32.86 ID:HxKIIocf0
その後小鳥さんは酔って愚痴って陽気になって寝てしまった。

P「そんなところで寝ると風邪引きますよ」

洗い物を終えて戻っても起きる気配がない。

P「しょうがない人だなぁ……」

子供のような寝顔では咎める気にもなれない。

結婚式を思い出しながらお姫様抱っこでベッドに運んだ。

小鳥「プロデューサーさん……むにゅ……」

昔の夢を見てるのかな。

久しぶりにそう呼ばれるとなんだかくすぐったい。

布団を肩までかけて隣にもぐりこむ。

酔いが回っていたのはお互い様みたいで、俺もすぐに眠ってしまった。



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:27:25.64 ID:HxKIIocf0
愛妻弁当を片手に陽気に挨拶をする。

P「おはよう!」

律子「おはようございます。……なんだか上機嫌ですね。なにか良い事でもあったんですか?」

P「今日は珍しく俺のほうが早く起きたんだけど、小鳥さんの寝顔が可愛くてねぇ」

律子が呆れ顔になった。

なんだよ。いいじゃないか。



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:34:18.83 ID:HxKIIocf0
律子「相変わらずのノロけっぷりですね。朝からテンション下がるんですけど」

P「すまんすまん。でもオレ幸せ過ぎて……」

律子「はいはい、ご馳走様です。それより新プロジェクトの件で相談したいんですけど……」


おっと、切り替えないとダメだな。

P「ユニットのメンバーは?」

律子「新人を起用します。荒削りながら光るものが見えます」

P「竜宮小町を育てた律子プロデューサーのお墨付きなら安心だ」

律子「あれは彼女達の実力があればこそです。無論この娘達も素質では負けてはいないと思いますが……」

P「なら竜宮を越えるよう頑張ってくれ。この件は律子に一任するよ」

律子「わかりました、来週末までには主だったプランを提出できると思います」



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:44:34.87 ID:HxKIIocf0
素早く業務に戻ろうとした律子をジェスチャーで引き止める。

P「律子、俺も相談したいことあるんだけど」

律子「? 珍しいですね、どうかしたんですか?」

P「うん……、小鳥さんの誕生日が近いんだけどなにを贈ればいいかな?」


メガネの律子さんは器用にかけたまま目頭を押さえていた。

律子「……そんなものは自分で考えてください」

P「いやいや、なにを贈っても喜んじゃうんだよあの人」

指輪を贈ったときはさすがに泣いてしまったけど。


律子「だったら聞かなくてもいいでしょう?私仕事したいんですけど……」

P「小鳥さん優しいから気を使ってるんじゃないかと……」

律子「……小鳥さんからなにか貰った時にお義理で喜んだことあります?」

P「あるわけないだろ!たとえゴミだろうが小鳥さんからのプレゼントなら宝石以上の価値があるわ!」

律子は黙ったままパソコンに向かってしまった。



23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 00:56:58.08 ID:HxKIIocf0
悩んで悩んで考えてるうちに小鳥さんの誕生日が来てしまった。

プレゼントはまだ決まってなかった。

自分の決断力に情けなくなりながら、プレゼントを探して街を歩いた。

日も落ちかかるころ、明滅しだした光が目に刺さった。

ひさしを深くかぶった店内には、色とりどりな花が咲き誇っていた。

P「ベタだけどこれもいいかな」

帰宅が遅くなって寂しくさせたくないし。

P「スイマセーン」

ファンシーショップや女性下着売り場ほどではないが、場違いな感じがして声が小さくなってしまった。

店員「はい?いらっしゃいませー」

良かった。店員さんも男性だ。

P「あの……花をですね、買いたいんですが」

言ってから気がつく。花屋で他に何を買うんだ。そこの堆肥でも買っていくのか?

店員「はいはい、どういったお花で?」

園芸の知識0の俺は完全に手詰まりになった。



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 01:03:55.31 ID:HxKIIocf0
P「えと……」

どうしよう。バラとかでいいのかな?

店員「んー……、どなたに贈られるんですか?」

P「つ、妻です。誕生日でして……」

店員「奥さんの誕生日ですか、おめでとうございます」

P「ありがとうございます!」

感じのいい店員さんだ。これから贈花のときはここに頼もう。

店員「予算はどのくらいにされますか?」

財布の中身と相談して金額を告げる。

店員「そうですねぇ……それだけあれば色々出来ますけど……」

P「はい」

お母さんに服を選んでもらってる気分だ。完全にオマカセ。

店員「奥様はどんな方なんですか?」

P「美人で優しくて料理がうまくて愛嬌があって頼りになる可愛い人です」

一息で言ってしまった。店員さんの口がポカンと開いていた。



27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 01:06:17.92 ID:HxKIIocf0
店員「そ、そうですか……。お幸せそうですね」

P「はい、すごく幸せです」

店員さんは頭をかきながら奥に引っ込んでしまった。

することがないので目を閉じた。

百花の香りに包まれてしばし陶然とした。



29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 01:12:21.23 ID:HxKIIocf0
店員「でしたらこれなんかがいいと思いますよ」

瞼を開くと大きな鉢植えを担いできた店員さんと目があった。

P「バラ……ですか?」

店員「いえ、ベゴニアと言います。正確にはエラチオールベゴニア」

P「はぁ……」

呪文みたいな名前だ。


店員「少し時期は外れてますけど、環境がよければ11月ごろまで咲きつづけますよ」

蛇の道は蛇。何もわからないので薦められるがまま買ってしまった。

いくつかの注意点をメモして店を出る。

鉢植えは重くてしんどかったけど、小鳥さんの喜ぶ顔が浮かぶと何てことないように思えた。



31 :俺も今調べながら書いたからおかしかったらゴメンね 2012/06/29(金) 01:20:36.44 ID:HxKIIocf0
P「た、ただいま……」

思えただけだった。かなりきつい。

小鳥「おかえりなさい」

エプロン姿の小鳥さんは手を拭き拭きやってくる。

P「ただいま」

小鳥「はい、おかえりなさい」

どれだけ繰り返しても飽きることはない。

でもキリがないから咳払いを一つして

P「小鳥さん、お誕生日おめでとうございます」

ベゴニアを玄関前から持ってきた。

小鳥「………………」

P「あ、あれ?気に入らなかった……かな?」

鉢植えが大きすぎて小鳥さんが見えない。

土間に置くと、小鳥さんが震えていた。



35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 01:31:00.31 ID:HxKIIocf0
P「へ……?」

小鳥「それ……ベゴニアですよね?」

P「あ、はい。正式名称はほかにあるらしいけど……」

小鳥「すごく……嬉しいです……」

良かった。喜んでくれたみたいだ。

堪らなくなって頭を抱き寄せる。

浮かぶままに言葉を重ねた。

P「あのですね、小鳥さんは気にしてるみたいですけど、
 俺は小鳥さんの誕生日が来るとすごく嬉しくなるんです」

小鳥「どうして……?私、またお婆ちゃんになっちゃいますよ……」

P「大切な人が生まれてきてくれた、すごく特別な日だからです。
  そんな日を一緒に迎えることができるのは、とても幸せだと思いますよ」

小鳥「……………………」

抱えた頭が縦に揺れる。

ずっとこのままでいたいと思った



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 01:36:18.69 ID:HxKIIocf0
ガチャッ

男の子「あー!お爺ちゃんとお婆ちゃんが抱き合ってるー!」



男「なんだなんだ、いい年して相変わらず熱々なんだな」

P「お、お前!来るなら来るって連絡入れろよ!」

年甲斐もなく赤面した顔を自覚しながら小鳥さんを離した。

男「昼間連絡入れたよ、聞いてなかったの?」

このムカツク喋りは若いころの俺そっくりだ。

変なところばかり似やがって。

女「……ベゴニアですか。もしかしてこれ誕生日プレゼントに?」

小鳥さんにプレゼント代わりの土産を渡しながら聞かれた。

P「そうだよ」

不機嫌さを上手く隠せずぶっきら棒になってしまった。

クソ。邪魔しやがって。



38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/29(金) 01:39:45.93 ID:HxKIIocf0
息子「ふーん……。親父やるじゃん」

P「は?」

息子「ベゴニアの花言葉だよ。……ひょっとして知らなかった?」

小鳥「ふふ……ベゴニアの花言葉はですね……」

早くも家の中で騒ぎだした孫を気にしながら

小鳥「『幸せな日々』ですよ。……私、すごく幸せです」

俺の小鳥さんがニッコリと笑った。











おしまい